田沼時代も後半に入りました。そろそろ失脚させられて、「白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」と揶揄された松平定信の寛政の改革時代へ突入するようです。
いわゆる重商主義を取った田沼意次が実は結構いろいろな物事に対してこだわりが少なく、新しい学問や事象を受け止められる器量のある人物として描かれています。そんな意次の下、平賀源内とこれはたぶん架空の人物(いろいろな蘭学者を寄せ集めたんだろうと思います)である青沼は日本男子を絶滅寸前まで追い込んだ「疱瘡」の原因を調べ始めました。そこで海外、といっても当時ですから主にオランダの文献を当たっていくうちに「種痘」に行き当たります。
そして、この「種痘」の方法を今の危機的状況を招いた「赤面疱瘡」に応用することにします。そして、その手法は不幸な死者も生み出しましたが、一方で希望も生み出しました。そうです、この方法によって「疱瘡」を根絶できる可能性が見えてきたんですね。
実際の源内は殺人事件を起こして獄死ですが、このマンガでは梅毒によって亡くなります。一方で種痘を取り入れて成功させたはずの青沼が意次失脚とともに刑死させられます。
この死の場面に胸が痛くなります。
そして源内の「人にありがとうって言われるのが大好きさ!」って言葉にも泣きそうになります。
そんなこんなで、長い間日本列島を席巻した「赤面疱瘡」の勢いが止まりそうになったというのに、幕府内部での政権交代でこの流れがおかしくなりそうです。松平家血縁の男子を「種痘」の副作用で亡くしてしまったことで難癖を付けられ関わった男子はみな大奥追放。最も後見したであろう青沼も死に、源内も死に。意次も失脚。時代が変わっていきます。
そして、とうとう「種痘」によって助かった一橋家の男子が百数十年ぶりに将軍となります。これが11代家斉。子だくさんで有名な人ですね。
権力に取り憑かれた女達がいまさら男の手に素直にそれを戻すとは思えません。これから幕末まで残り数十年ですが、どうなるんでしょうか。
ラスト、源内が病死し、大奥で蘭学に励んでいた黒木が雨の中叫ぶシーン。
「理不尽」という言葉がこれほどすとんとくる場面はないでしょう。
さて、家斉・定信時代はこれからどう描かれるのでしょうか。
次の巻までおとなしく待てないので、本屋で立ち読みしようっかな。
とかいいつつやっぱりまとめて一気に読むには単行本。
じっと我慢の子で待つことにしましょう。
720円なり
by 宇川晶