もやしもんの作者が英仏100年戦争の時代を舞台に「魔女」と呼ばれた少女マリアを描ききったマンガです。約600年前、ドーバーを挟んだ両側のイギリスとフランスの間で長い長い戦争が行われた時代です。有名なルネサンスよりもさらに100年以上前ようやく中世と呼ばれた時代を脱してヨーロッパが近世に移行し始める前の実に混沌とした面白い時代です。そしてこの100年戦争で最も有名な逸話と言えば「ジャンヌダルク」でしょう。
さて、そんな聖と悪が混在し、キリスト教と土着の宗教がまだ複雑に絡み合って異端審問だの魔女裁判だのがまかり通っていたそんな時代に魔女マリアは英仏両軍の間を飛び回って戦力を削ぐことをしています。そして、この当時魔女と呼ばれた女性達と同じように薬を調合したりしていました。そこへ、このマリアの調停を聞きつけたフランス軍の若い兵士が書状を持ってきます。この兵士の名は「ジョセフ」、そしてマリアが使い魔にしているのがふくろうの「アルテミス」、後に話に深く関わってくるのが大天使「ミカエル」とその使い「エゼキエル」
清らかな魔女であるマリアはいろいろと清らかであるが故に面白い言動や行動を取ることもあります。男女の事を何もしらないのに、使い魔は「サキュバス」。途中でもう1話のフクロウを使い魔にしますがこっちは「インキュバス」なのに、マリアが清らかすぎるために大事なところがぼやーっとしたまま。男の子なのに。
さて、3巻ですね。
一応完結です。
イギリス一の魔女ビブがミカエルに言う言葉が実に面白い。
ミカエルの上司(?)ヤハウェ、確かにこの神は自分だけをあがめよと繰り返す嫉妬深い神です、旧約の中で何度かそれに基づいたエピソードが描かれます。そしてこれまたとっても疑り深い面もあります。そういう神は「愛を知らない」と言い切るんです、1人で生きてきたマリアの友達になったビブは。そしてそれに反論しないミカエル。
ハッピーエンド、ですね。この話はどういう方向に向かうのかと思っていたら、なんとなんと素晴らしく純愛話に落ち着きました。そう、マリアとジョセフがくっつくんです。ここで「ん?」と思ったあなた、そうこれはまさにイエスの両親の名前なんですねぇ。そしてミカエルからの受胎告知ときたらもう何を暗喩しているのかしらねぇ。
まあとにかく、魔女で処女のマリアが自らの幸せを知ってこれからどうなっていくのか楽しみですね。ラストページに「予告」として2015年の表示があります。どういう話になるんでしょうか。
サブタイトルの「意思を持った魔女、力のある乙女」。そのまんまの乙女マリアでした。
620円なり
宇川晶